質問箱で頂いたこちらの質問に今回は答えていきたいと思います。
個人相手から企業相手にどうやって切り替えて営業していくか。
まず普段、自分自身がどんな形で営業しているのか、これを冷静に見ていくと良いと思います。
今の自分の視点を見つめなおす
企業への営業を考える前に、まずは世の中にどんな企業があって、その中で自分がどんな仕事をしたいかをはっきりさせる必要があります。
世の中の会社の大多数は、普段みなさんが広告や店舗などで目にするような「ToC」(対一般消費者向け)ではなく、「ToB」(対企業向け)の業務を行っています。
では「ToC」ってどんな仕事をいうのでしょう?
例えば、「普段自分が本屋で見ているようなあの雑誌で仕事がしたい!」
当然、出来たらいいですよね…僕もそう思います…!笑
では、世の中のイラストレーターさんのどれくらいがそう思っているでしょうか?イラストレーターになりたいと考えている方も含めると、相当な数だと思いませんか?
もちろんそういった仕事ができればそれに越したことはないのですが、目に付きやすい仕事というのは、それだけ目立つ仕事、華のある仕事だということも言えます。やりたいと思う方が多いのも当然です。
では、そんな仕事はどれくらいあるのでしょう?
自分の身の回りで働いている人はToBの事業をやっている会社に勤めている方が多いのではないでしょうか。こういったことからも、イラストやデザインも含め、世の中にある仕事の大多数はToB向けであるということが推測できそうです。
一方、前述の「本屋でよく見かけるあの雑誌の仕事」。もちろんこれはToCの仕事ですが、世の中の大多数の仕事はそうではないということは先ほど述べた通りです。そんな状況で、ToC向けの仕事や企業だけを見てしまっていることにもなってしまうわけですね。
つまり、少ない貴重な仕事のパイを、大勢で取り合っている、そんな状況ということです。倍率でいうと本当に何十倍、下手すると何百倍かもしれません。
もちろん、だからといってToC向けの企業への営業をするのが悪いというわけではありません。あくまでも、「対企業への営業」を目標とする場合には視野を広げたほうが可能性が広がるということです。
では、ToB向けの業務を行っている会社では、どんなイラストのニーズがあるのでしょう?これは例えばチラシやカタログなど、一般消費者向けに使うような媒体とほとんど変わりはありません。
唯一違う点を挙げるとすると、ToB向けが出す媒体ですから、当然そのターゲット先も企業、つまり普段の自分の目には届きにくい場所になります。例えば業界向けの専門誌のカットであったり、業界向けのイベント用PRイラストだったりするわけですね。
単純に、ToB事業が普段自分の生活とは遠いところにあるというだけで、いろいろなところにニーズは潜んでいます。対ToBに特化したデザイン会社も世の中には数多く存在します。
これは極端な例で恐縮ですが、僕も駆け出しのころはToB企業コンペ用(自分のイラストのコンペではなく、ドラマなどで見るような企業が案件を勝ち取るために行う、企業間での企画のコンペです)の資料に必要なイラストを描いてほしい、ということで、世の中には流通しないことが確定しているイラストの案件もよく描いていました。
こういったニーズもあるということをまずは知っておくと良いと思います。
逆に自分は企業視点になっているか
さて、企業に営業をする場合は、個人に営業するような形とは違います。これは企業向けの会社でも、一般顧客向けの会社でも同じです。
自分からどうやって働きかけ、発注する側の企業の立場になれているか、が重要だと思います。
まずは企業が活発に動く時期を考えてみましょう。
一般的に期末の繁忙期となる2~3月は、余剰予算を使い切るために案件が活発になりやすかったりします。
また、ここ最近では増税前の駆け込み発注も多かった印象です。
こういった世の中の動きと企業の動きは連動していますので、そこに合わせて数か月前くらいに上述したような対ToBのデザイン会社へポートフォリオやサンプルイラストを送っておくなど、あらかじめ印象付けておくのも良いと思います。
質問者様がどのようなサンプルを作っているのかが分からないのですが、その際には対個人向けで作るようなアイコンやイラストではなく、業界に合わせた内容のカットイラストなどを描いておくと良いと思います。
ストックイラスト作りから学ぶ、サンプル制作
この辺の考え方としては、ビジネス向けのストックイラストを作るのに似ていると思います。業界向けに専門的なカットイラストを描いておくと、その業界と同じToC向け企業の営業用サンプルとしても使えますし、「この人は業界のことを理解している」という知識の部分で、他のイラストレーターよりも有利に立つことも可能です。
この、「業界に強いイラストレーター」という印象はものすごく大切です。
「●●といえばこのイラストレーターさん」、「女性向けイラストといえば常盤クニオさん」、といった感じで制作会社の中で印象が付くことで、制作会社さんの方で新しい案件が浮上した際に、まず声が掛かりやすくなります。
企業に自分を知ってもらう
企業に自分を知ってもらうことで、営業せずに逆に企業から依頼してもらえるという夢のようなパターンも実現可能です。
SNSでも企業がキャンペーンでイラストレーターを募集していたり、企業ブログなどでも同じように募集していることもあります。(たいていこういったパターンはToC、一般顧客向けの企業です)
こういった企画などに即座に応募したり、常日頃から動いておくことで相手に印象付けておく。軌道に乗るまでが長いですが、いろいろな場所にタネを撒いておくことで、企業から声をかけてもらえることもあるかもしれません。
SocialDogなどを使用してTwitterで特定のキーワードで通知されるように設定したり、Googleアラートを設定するなどして常に自分に情報が集まるようにしておきましょう。
【参考】SocialDog(無料のTwitter管理ツール)
Googleアラート設定方法(Marketing Native)
また、マーケティングツールのJuicerを使用して、自分のサイトに訪問している企業を調べてそこに逆営業をかけるという手段も取れます。
Juicerはこんな感じで代表的な訪問者のプロファイリングもしてくれます。
Webツールもうまく使えばいろいろな方法を取ることが可能ですよ!
こんな感じで、対面営業だけが企業から仕事を受けるための営業方法とは限りません。慣れてくればさらに営業方法を展開して、自分がやりたい仕事にどうやって近づけるかを考えていくと良いと思いますが、まずは視野を広げるところから始めていきましょう。